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(榎本)人は 一つのものに 集中していると 他のものが 見えなくなります。 必死になれば なるほど 周りが 見えなくなり 一番 大切なことを 見失ってしまうこともあります。 真実は 人の目線によって 幾とおりもの 答えを 持っています。 でも 現実に起きている 事実は 一つです。 あなたが 今 見ているものは 果たして 事実でしょうか? 大事なことを 見落としてはいませんか? 今回の密室は そういった 人間の性質を利用して つくられたものですので 注意して ご覧ください。 それでは 密室劇場の始まりです。 (水城)あと 1回 詰めれば 企業法務の会の 会合の流れは 決まりそうだね。 (芹沢)会長ともなると 大変ですね。 お仕事の方も お忙しいでしょうに。 (水城)ああ。 サポートしてくれて 助かるよ。 (水城)しかし あの若造が 今や 企業法務界のエースか。 (芹沢)私が エースならば 先生は キングですよ。 おお。 私は 先生の教えを 忠実に 守ってるだけなんですから。 私は 密室事件の解き方なんか 教えてないぞ。 あれ? 先生の お耳にも 入っちゃいました? 君に そんな才能があるとは 知らなかったよ。 僕も 知りませんでした。 (水城・芹沢)ハハハハ。 ところで どうだ? あいつは。 特に 変わった様子は ありません。いつも 元気に 働いてくれてます。 (純子)劇団 幸楽園? (里奈)私 実は 出演してるんです。 (純子)えっ? 里奈ちゃんが!? あー! ホントだ。 あっ。 私 この日 休みだから 行けますよ。 (里奈)ホントですか? (純子)うん。 へえー。 (水城)よう。 (里奈)あっ。 チラシ 隠してください。 (純子)あっ はい。 (水城)ちゃんと 頑張ってるか? (里奈)やめてよ お父さん。 (純子)えっ? 里奈ちゃんの お父さま? (水城)娘が お世話になっています。 あっ。 こちらこそ お世話になっております。 おい。 もう 演劇なんか やめてんだろうな? ここで そういう話 やめてよ。 水城君。 何? 演劇 やってたの? 大学までね。 まあ 遊びみたいなもんですよ。 里奈。 笑顔だぞ。 スマイル スマイル。 演劇のこと お父さまに 内緒なんですね。 ああやって 言ってくるので やめたって 言ってあります。 うん。 芹沢さんにも 言わないでください。 分かりました。 お待たせしました。 急な お誘いだったのに ありがとうございます。 タイトルが 興味深かったので。 ああ。 私も 知らなかったんですけど この舞台 面白いって 口コミで広がって 今 話題になってるんですって。 演劇の前にやる パフォーマンスも人気みたいですよ。 そうですか。 榎本さんって 舞台とか 見たりするんですか? いえ。 学芸会以来です。 学芸会って。 (ブザー音) あっ。 始まる。すごい。すっごい!うわっ! すごい すごい すごい すごい すごい すごい すごい。ああー! すごい! 人間の動きとは 思えませんね? ええ。(劇団員)ここは イギリス 近くにある 絶海の孤島と呼ばれる 呪われた島。 物語は この島に 1隻の船が 漂着したところから 始まります。 あっ。 あのピンクの子が 里奈ちゃんです。 (里奈)いまだ 誰にも 明かされていない 密室トリック。 あなたに その謎が 解けるでしょうか? (足音) (劇団員)俺は やってないって 言ってるだろうが! それに ここは 島だぞ。 何が 密室だよ? それは 違います。 えっ? (里奈)ここは 立派な密室よ。 島 崖 雪山など 自然の造形によって 隔絶された より 大きな空間も 密室と呼ばれるのよ。 そうなんですか? ええ。 へえー。 (里奈)あなたが死ねば この場所は完璧な 密室殺人の現場になる。 (劇団員)何をするつもりだ? (劇団員)待て。 やめろ。 やめろ! (撃鉄を起こす音) (劇団員)うわー! (銃声) (劇団員)このトリックを 使えたのは ただ一人。 あなただ! (里奈)私は 悪くない。 あの男が! あの男。 あっ。 あっ。 (里奈)あの男が。 あの男が 悪いのよ! まさか あんな トリックなんて 全然 気付かなかった。 榎本さん。 気付きました? 中盤で 分かりました。 物理的なトリック以外 他に 方法は あり得ませんでしたから。 さすが。 そういえば セットに ぶつかってたけど あれは アクシデントですかね? さあ。 里奈ちゃん 遅いなぁ。 すいません。 (スタッフ)はい。 あの。 出演者の 水城さんに 挨拶したいんですけど。 (スタッフ)よし。 どうぞ。 (劇団員)早く! 警察! 警察 呼ぼうよ! 警察。 (劇団員)どうなってんだよ? これ。 (スタッフ)どうしたんですか? みんな 揃って。 (里奈)青砥さん。 薬師寺さんが 死んでたんです。 えっ?あれから 3日 たつんですけど まだ 警察は 事件の真相を つかめていないそうです。 青砥先生。 はい。 水城君の お父さんは 俺の大先輩だ。 仕事には 厳しい方だ。 が 私生活は もっと 厳しい方だ。 その先輩が 俺を信頼して 一人娘を預けてきた。 いつも 会うたびに さりげなく 様子を聞いてくるんだよ。 じゃあ 色々 里奈ちゃんのことを 報告してきたんですか? いや。 それは 俺のポリシーに反する。 彼女の私生活を 詮索したことは 一度も ない。 なあ? 水城君。 はい。 かわいく 「はい」じゃないんですよ。 何で よりによって 君まで 密室殺人事件に 関わっちまうんだよ。 しかも 容疑者の一人が 彼氏だなんてさ。 それは 里奈ちゃんが 悪いわけじゃありません。 そのとおり。 君のせいだ。 えっ? 私!? 君が ここに来てから 密室事件ばかり 寄ってくる。 俺は もう 腹 いっぱいなんだよ!でも それまでの事件は 芹沢さんも 乗ってたじゃないですか。 乗ってないよ。 乗ってません。 大人は そう簡単に 乗るもんじゃないんだよ。 じゃあ 前回の事件のとき チーム榎本って 言ってたのは 何だったんですか? ああ。 あれは ノリだ ノリ。 うん。 事件が解決した 高揚感でさ 訳の分かんないこと 口走っちまうことだって あるだろ。 それぐらい 分かれよ? 大人なんだから。 分かりません! そんなことより 里奈ちゃんの力に なってあげましょうよ。 芹沢先生! お願いします! 取りあえず 説明してみて。 この方が 被害者の 薬師寺さんです。 薬師寺さんは 楽屋で 頭を 木刀で殴られて 亡くなっていました。 凶器になった木刀は 小道具の 木刀と一緒に 置かれていました。 小道具の木刀? 薬師寺さんは パフォーマンス中に 小道具の木刀で 頭を 殴られることになってたんです。 そういうことか。 で? 問題は 本物の木刀と 小道具の木刀が まったく 同じ デザインだったということです。 本物の木刀を まねて 小道具は 作られていたので 一緒に置かれていたら 見分けが つかなくなります。 薬師寺さんは すごく 芸に こだわっていて 小道具を使って 殴られ方の練習をよくしてたんです。 それじゃさ 殴る役のやつが 犯人だった可能性が 高いじゃないかよ。 それが 里奈ちゃんの彼氏です。 ど真ん中じゃん。 密室を 破ってみれば 娘の彼氏 犯人。 字余りじゃないかよ。 そんなこと 水城先生に 報告できないよ。 最悪 俺の監督責任が 問われちまう。 あの人 怒らせたりしたらなぁ。 それで 芹沢さんが 怒られるのは 筋違いな話です。 そうだよ。 筋違いだよ。 筋違いなことで 怒ったり 怒られたりすんのが 大人の世界なんだよ。 君だって さっき 俺に 筋違いな言い掛かりを つけられたんだから分かるだろ。 それは 分かります。 ともかく 今回の事件に 俺を巻き込むのは やめてくれ。 分かりました。 仕方ありません。 じゃあ このことは 里奈ちゃんから お父さまに 報告しましょう。 ねっ? はい。 ただ 気掛かりなのは 芹沢さんが 里奈ちゃんに 彼氏がいて 劇団に 入っていたことを まったく 知りませんでしたと 正直に お伝えしなきゃ いけないということですね。 そう きた? 腕 上げてきたじゃねえか。 芹沢さんに いつも 鍛えていただいておりますので。 ハァー。 榎本に 電話しろよ。 弁護士の 青砥と申します。 今回は ご協力いただき ありがとうございます。 (奈緒)演出家の 畑山です。 (鬼塚)脚本を 担当している 鬼塚です。 (里奈)お二人は パフォーマンスもされているんです。 あんな事件が あったばっかりなのに もう 稽古を始めてるんですね。 (奈緒)稽古も 一応 仕事なんです。 邪魔しないでくださいね。 はい。 (奈緒)いつまで たらたら やってんの? 芝居 返すわよ。 (一同)はい。 すいません。 (鬼塚)すいません。 あいつ 無愛想で。 ああ。 いえ。 (鬼塚)ああ。 これが 図面です。 ありがとうございます。 すいません。 彼と話してきます。 はい。 鬼塚さんは 台本も 書かれてるなんて 多才ですね。 (鬼塚)ああ いや。 劇団を立ち上げた 当時は 劇団員も 少なかったので パフォーマンス以外も 自分たちで やらなきゃいけなかったんです。 ああ。 で 僕は 脚本を。 (奈緒)腹から 声 出せよ! (鬼塚)畑山は 演出を 担当するようになったんです。 薬師寺さんも 何か 担当されていたんですか? (鬼塚)昔は 照明を やっていたんですが 劇団員が増えてからは パフォーマンスだけに 専念していました。 そうですか。 (鬼塚)あの。 あちらの男性も 弁護士さんなんですか? あっ。 違います。 あの人は セキュリティー会社で 働いている榎本さんです。 幾つもの 密室事件を 解決してくれてるんですよ。 あの方が? はい。 あの。 薬師寺さんが亡くなられた 楽屋なんですけど。 えーと。 上手じゃなくて。 ああ。 ここから見て 左手が 下手の楽屋。右手が 上手の楽屋です。 ここから 右側が 上手。 左側が 下手。 (鬼塚)ええ。 それで どうして 薬師寺さんだけ 下手の楽屋だったんですか? (鬼塚)あそこは 倉庫になっていまして 昔から 薬師寺しか 使ってなかったんです。 つまり 薬師寺さん専用に なっていたってことですか? そうです。 ふーん。 薬師寺さんが亡くなっていたのは ちょうど ここです。 凶器になった木刀は 床に 転がっていました。 そして ここには 小道具の木刀。 状況は シンプルですね。 薬師寺さん専用の楽屋に 誰が 入ったんでしょう? 役者の方たちは 薬師寺さんが パフォーマンスを終えたときには 幕の後ろで スタンバイしていました。 それに 上演中も 暗転がなく 出ずっぱりでしたよね? はい。 役者の方が 楽屋に 行っていないことは 劇団が 記録用に撮影していた 映像で 証明されています。 じゃあ 楽屋に入った可能性は ないですね。 ありません。 ですが パフォーマーの4人は 出番を終えると 幕の中に 入っていったので 客席からは どちらの楽屋に 向かったのかは 分かりませんでした。 役者の方たちも 誰が どちらの楽屋に 向かったのか 見ていなかったようです。 じゃあ パフォーマーの3人には アリバイが なかったってことに なりますよね? 里奈ちゃんから 聞いたんですけど。 (刑事)《ご協力 ありがとうございました》 (片山)《外部から 出入りが なかったことは 確認が取れました。 鍵は ホントに一つしか なかったんですよね?》 (奈緒)《はい。 売店の スタッフが 管理している その 1本だけです》 (片山)《上手の楽屋に 戻ってこられた 順番は 井岡さん 畑山さん 最後に 鬼塚さんの順番で 間違いないですね?》 《はい》 (片山)《井岡さんは 楽屋に入って すぐ 寝てしまったんですよね?》 (井岡)《昨日のバイトが 夜までだったんで》 (奈緒)《私は 楽屋を すぐ出て 客席の 一番 後ろで 劇を見ていました》 (鬼塚)《僕は 最後に 楽屋に入ってずっと 本を読んでいました》 (片山)《お二人が 入ったときには井岡さんは すでに寝ていた?》 (奈緒・鬼塚)《はい》 客席の 一番 後ろにいた 畑山さんを 目撃した人は いないようですし 井岡さんは 眠っていたので 鬼塚さんが 楽屋にいたかどうか 証明できていないそうです。 その3人の中に 犯人がいると 警察も みているようです。 えっ? その情報は どこから 入手したんですか? 捜査1課の 鴻野さんから 聞きました。 えっ? あの 芹沢さんと 仲の悪い 鴻野さん? こっから 外に出る方法は 2つしか ありません。 一つ目の方法は このドアを開け この階段を上り この売店横を通って ロビーから 外に出る方法です。 うーん。 でも 鍵が掛かってたし スタッフもいたから ここを通るのは 難しいですよね。 難しいでしょう。 もう一つの方法は この舞台袖を通って 舞台を横切り。 すいません。 (劇団員)何だ? あれ。 上手の楽屋前の このドアから 外に出る方法ですが。 あっ! 観客 200人の前を 横切るのも 難しいですよね。 これも やっぱり 密室っていうんですか? はい。 この状況も れっきとした 密室です。 うん。 犯人は どうやって 薬師寺さんを殺して この密室を つくったんでしょう? 3人に 動機は? 被害者の 薬師寺さんと 畑山さん 鬼塚さんは 最近 うまくいってなかったそうなんです。 どうして? 原因は 井岡さんのようです。 井岡さんは 役者になりたくて バイト先で 知り合った 鬼塚さんを頼って 劇団に 入ってきたそうなんですけど。 (井岡)《あしたか あさってには お前の友達も…》 (薬師寺)《はい はい はい! 何だ? その芝居は!》 でも 演技を 薬師寺さんに 認めてもらえなくて 舞台に 立たせてもらえなかったんです。 そこで 鬼塚さんは 井岡さんを パフォーマーとして 出演させることにしたんです。 でも 薬師寺さんと 畑山さんが 反対して 3人の仲は どんどん 悪くなってったそうです。 じゃあ 井岡の動機ってのは 役者として 認められなかったことだけか? あと 分かりやすく言えば 薬師寺さんから いじめられていたそうです。 調べただけ 怪しくなってんじゃねえかよ。 でも まだ 密室は 破れたわけではないですから。 まだ 犯人とは。 密室 破る ヒント 何か あったか? 榎本。 特には 見つかっていません。 うん。 それじゃあさ 犯人 舞台 横切ったんだよ。 そうしようよ。 榎本。 観客 200人の前を 横切る方法は まだ 思い付きません。 そうか。 分かったよ。 分かっちゃったよ。 犯人にはさ 共犯者がいたんだよ。 それが 役者だとしたらば。 (劇団員)《なぜ この島を 選んだのか?》 犯人は その役者の動きに合わせて舞台の袖から 袖に 移動できる。 いや。 舞台の照明によっちゃ 影に見えるかもしんない。 面白い発想ですが 今回の劇では そういった 動きをする 俳優は いません。 あっ そう。 ハァー。 とにかくさ 俺は あしたの 午後 1時に 水城先生と会うんだ。 それまでに 密室を破って 井岡以外の容疑者を 見つけだし 俺の心の安寧を 取り戻してくれよ。 俺は あれが あれなんで あと 頼むわ。 あれが あれって。 榎本さん。 里奈ちゃんのために 2人で 密室を破りましょう。ああー。 私 寝ちゃってたんだ。 うん? あれ?もしかして 密室は 破れそうですか? 榎本さん?この密室は 破れないかもしれません。 破れないかもしれない? 破ってもらわなくちゃ 困るんですよ。 いつも 会うたんびに 娘は どうしてるって 帰り際に 聞いてくるんだ。 事件のことを隠してさ 元気にしてますよって 答えられるわけないだろ。 でもな 事件が 解決さえ してくれれば 元気ですって 言えるんだよ。 どうしてですか? ホントに 元気だからだよ。 そういう問題でしょうか? そういう問題だろ。 でも 昼までに 解決するなんて 現実的じゃありません。 事件のことを 俺に 3日も 黙ってた 君の責任なんだよ。 何とかしろ。 俺と 水城君のためにな! 分かりました。 失礼します! 時間がないので 単刀直入に お聞きしますが 鬼塚さんと 畑山さん どちらが 犯人だと思いますか? (井岡)えっ? いや。 そんなの 分かりません。 まあ そうですよね。 (里奈)今 自分が 警察に 疑われてるって 分かってる? (井岡)分かってるよ。 でも 俺は ホントに 何もしてないから 捕まること ないって。 あの。 井岡さんは 密室が お好きなんですか? えっ? (井岡)ああ。 これは 役作りのために。 でも 井岡さんは パフォーマーですよね? (井岡)いつでも 演技場に 立てるように 準備してるんです。 (奈緒)私を 犯人だと思ってるんでしょ? いえ。 (奈緒)でも 残念ですけど 私は やってませんし 何も 知りません。 聞きたいことは それだけですか? 今回の 演劇の台本を書いたのは 井岡さんですか? (奈緒)どうして そんなこと 聞くんですか? ちょっと 気になることが ありまして。 (奈緒)うちの脚本家は 鬼塚ですから 鬼塚が書きました。 その言葉 信じていいんですよね? それは 自分で 判断してください。 私は そんなに 簡単に 人を信じないけど。 じゃ 失礼します。 そうですか。 教授。 ありがとうございました。 (ノック) [TEL](呼び出し音) [TEL]もしもし? あっ。 榎本さん? 密室 破れました? [TEL]まだ 破れません。 ああ。 もう こっちは 鬼塚さんが 電話にも出ないし 家にも いないんですよ。 鬼塚さんなら ここにいますが。 えっ!? [TEL]あっ。 だったら そのまま 引き留めてください。 あっ。 あと 可能であれば 犯人かどうか 探ってみてください。 何げなくですよ。 何げなく。 分かりました。 (鬼塚)忙しいときに アポも 取らずに 来ちゃって すいません。 ああ。 次の舞台の題材で 防犯ネタを 使いたいんです。 ああ。 すぐ 終わるので 幾つか 質問に 答えていただけませんか? あなたは 犯人ですか? えっ? 直球な 質問ですね。 すいません。 実は 誰が 犯人か 興味ないので。 フフッ。 僕は 犯人じゃありません。 そうですか。 あっ。 密室トリックについて 何か 分かったことが あるんですか? いえ。 まだ ありません。 ああ。 そうですか。 どうぞ。 あっ。 すいません。 ああ そうだ。 僕らの演劇の トリック どうでしたか? 密室の専門家から 見て。 興味深い トリックでした。 どうして あのトリックを 思い付いたんですか? アハハ。 色々 考えてたら 浮かんだんです。 心理的なトリックを。 そうですか。 じゃあ 質問させてください。 えー。 まず…。 あっ。 榎本さん? あれ? 鬼塚さんは? あれ? あっ。 榎本さん。 鬼塚さんは 帰っちゃったんですか? はい。 犯人ではないと 言っていました。 ただ…。 ただ? 鬼塚さんは 嘘をつきました。 嘘って 何を? あの演劇で扱った 密室トリックは 物理的な偽装による トリックでした。 それを 心理的なトリックと 言ったんです。 あの。 台本を書いた人が 一番 大事な トリックを 間違えたりしますかね? あのトリックは 特殊でしたから 間違える可能性は 低いと思います。 じゃあ やっぱり 当たってるかも。 井岡さんが 密室の作り方を 解説した本を 持ってたんですけど。 実は 私も 読んだことがあるんです。 青砥さんが 密室の本を? えっ? あっ あっ。 あれです あれ。 あの さ…。 参考程度に 読んだんです。 まだ 全部は 読めてませんけど。 その本が どうしたんですか? その本で解説してた トリックと あの演劇の 密室トリックが すごく 似てるんです。 物理的な偽装による トリック。 はい。 榎本さん。 もし あの演劇の台本を 鬼塚さんが 書いていないとしたら全て 納得できませんか? それは どういうことでしょうか? 鬼塚さんが トリックを言い間違え井岡さんが あの本を持っていた。 つまり…。 井岡さんが 鬼塚さんの ゴーストライターだと 言いたいんですか?そうです。 でも どうやって 証拠を つかめばいいんだろう? こんなことを させてしまって ごめんなさい。 (里奈)いえ。 彼の疑いが 晴れるなら。「本」?(ドアの開く音)(ドアの開く音) 井岡さん ごめんなさい。 これは 私が頼んだことで 里奈ちゃんは 何も悪くないんです。 そんなこと 分かってますよ! これが 井岡さんの身の潔白を 証明する 唯一の方法だったんです。 やっぱり 井岡さんが…。 どうして 隠してたの!? これは お互いが 納得済みのことなんだ。 どういうこと? (井岡)鬼塚さんは たった一人の 恩人なんだ。 (里奈)いくら 恩人だからって! (井岡)俺は 演技ができれば それで いいんだよ! 里奈ちゃん。 (里奈)青砥さん。 お願いします。 早く 密室を破って 彼の容疑を 晴らしてください! やっぱり 井岡さんが 鬼塚さんの代わりに 台本を 書いてたんです。 そうですか。 密室を破らなければ 犯人を 特定することはできません。 でも 密室をつくったのが 鬼塚さんだと 想定すれば 方法を 絞ることはできますよね?できると 言ってください! そうですね。 鬼塚さんは パフォーマンスを 最後に終えたので 密室をつくる時間は 芝居と 同じだけの長さ。 つまり 80分 あったことになります。 その間に 何かを 行ったことになりますね。 舞台上で 何かが起きてたら 私たちが 気付きますよね? ああー。 舞台上。 水城さんは 今 劇場にいるんですよね? はい。 では 今から 劇場に 向かいましょう。 また 劇場? もうすぐ 水城先生が来るぞ。 おい。 [TEL]あと もう少しなんです。 何とか 引き延ばしてください。 あっ。 いつも 最後なんですよね? 里奈ちゃんのことについて 聞かれるのは。 俺は 仕事が早いんだよ。 どうやって 引き延ばすんだ? [TEL]何とか お願いします。 あっ。 劇場に着いたんで 切ります。 [TEL](通話の切れる音) お… おい! ああ。 (ノック) はい! どうぞ。 (水城)失礼しますよ。 ああ 水城先生。 ご足労いただきまして ありがとうございます。 (水城)ああ。 しかし 最近の天気は よく 分からないですね。 ああ。 最初に 謝らせてくれ。 芹沢君。 何でしょうか? けさ 会った クライアントが 実に 無礼なやつでね まだ むかむかしているんだ。 だから 不機嫌に 見えるかもしれない。 でも 君を 怒っているわけじゃ ないから 気にしないでくれ。 こちらは 構いませんが。 水城先生を そこまで 怒らせるなんて。 今日は 早く 終わらせよう。 分かりました。 上演中に セットに ぶつかっていましたね? (里奈)はい。 よくあることなの? いえ。 いつもは あそこには ないはずなんです。 たぶん 誰かが 間違えて 置いたんだと思います。 珍しく 水城先生が 聞いてこなかったから ホントのこと 伝えずに済んだよ。 ああ。 ホントですか。 よかった。 [TEL]安心すんのは まだ 早い。 打ち合わせが 1日 増えちまったんだ。 だから 一刻も早く 事件を解決してくれ。 分かりました。 お疲れさまです。 毎日 大変ですね。 やっぱり 井岡さんが 台本を 書いてたんですね。 名探偵みたい。 本当に この事件を うやむやにして いいんですか? 薬師寺さんは 大事な 仲間だったんですよね? 私は 名探偵じゃありません。 弁護士です。 何か あれば いつでも 連絡してください。 手遅れになる前に。(鬼塚)先ほどは ありがとうございました。 あっ。 何か? さっきの動きは どれぐらいの時間やれるんですか? (鬼塚)ああ。 今のですか? 計ったことがないので 分かりませんけど たぶん 20~30分が 限界かな。 ああ。 どうしてです? いえ。 あっ。 どうしたんですか? 芹沢さん。 ああ。 今 水城君から 連絡 あって。 彼が 警察から 任意同行を 求められたんで 一緒に 警察署に 向かってるそうだ。 まずいぞ 青砥。 これは 本格的に まずい。 警察が 本腰を 上げたってことですか? 俺は 警察署 行って 様子 見てくる。 はい。 ハァー。 (ノック) はい。 畑山さん。 井岡が 任意同行されたって 聞いて。 全てのことを 話してくれるんですね?(奈緒)どうか 鬼塚に 自首を勧めてください。 分かりました。 (劇団員)「どなたから もらったものですか?」 (劇団員)「中の写真は どなたの写真ですか?」 今 鬼塚さんは どちらに いらっしゃるか 分かりますか? (奈緒)この時間は 一人で 劇場で 練習しているはずです。 (劇団員)「なぜ この島を 選んだのか?」 一緒に 行きましょう。 いえ。 仲間が 捕まるところなんて 見れません。 (劇団員)「あなただ!」 お願いします。 はい。 [TEL](メールの着信音) えっ? ホントか? 分かった。 俺も すぐ 劇場に向かう。 [TEL](奈緒)弁護士さんが 今から そっちに行くから。 運転手さん。 すいません。 アルテリオ劇場って 分かります? 鬼塚さん?(ドアの開く音) あっ。 榎本さん! (ドアの開く音) フッ。 どうしたんですか? こんな時間に。 密室は 破れました。 説明してくれ。 まず 鬼塚さんは パフォーマンス 終了後 下手の楽屋に向かい 薬師寺さんを 木刀で 撲殺しました。 (薬師寺)《うわっ!》 そして この切り出しに隠れながら舞台を 横切ったんです。 ちょっ。 ちょっと 待ってくれよ。 おい。 そんな 大きなもんが動いたらさ 観客が 気付いちまうだろうが。 人間の目は あまりにも ゆっくり 移動するものを 認識できないんです。 ここで オープニングの映像を 振り返ってみましょう。 人間の脳は 例えば 一つのものに 集中して 見ていると 背景などで起きた 変化を 見落としたり 事前に 映像の一部が 劇的に 変わると 教えてもらっていても 簡単には 識別できないんです。これを 見てください。 ずっと 見ていると かえって 気付きませんが 芝居の最初と 最後の映像を 見比べると 1個の切り出しが 舞台を 横断していることが 確認できます。 この切り出しに 注目してください。 早送りします。 ホントだ。 動いてる。 この舞台は 差し渡しが 10m あります。 使えた時間は 80分前後。 10mを 移動するのに 80分 かけたとすれば 時速 7.5m。 秒速にして 0.2cmです。 そこまで ゆっくり動く 物体を 客席から 識別するのは まず 不可能です。 これは 特殊な動きで鍛えた 筋力を持つ人間にしか できないことです。 さらに 今回 観客は 何か 奇妙なことが起きてるという認識も ありませんでした。 仮に 切り出しの位置に 違和感を 覚えた人がいても 気のせいだと 思うだけです。 そして 水城さんが 上手側にある 切り出しに ぶつかったときには 鬼塚さんは すでに 上手の楽屋に いたと思われます。 つまり 彼にしか できないということか? はい。 ですが 小道具の木刀の中に本物の木刀が 紛れていたので 殺人なのか 事故なのかは 分かりません。 鬼塚さん。 殺意は あったんですか? ありませんでした。 練習を頼まれて 本物だとは 気付かず 殴ってしまったんです。 じゃあ そのことを 警察 行って 話しましょうよ。 はい。 でも 芹沢さん。 畑山さんが。 ホントに 事故なんです。 計画的に 人を殺すなら 舞台を横切るなんて 方法 普通は 選ばないでしょう? いえ。 これは 計画的な犯行です。 どうして そう言えるんですか? 事故である可能性を 強くするために 誰もが 無謀だと思う方法を あなたは あえて 選んだ。 犯行が発覚しても 殺意がなかった 事故という 答えに行き着くよう 全て 計画してあったんです。 今回の犯行は 緻密な計算 恐ろしい集中力 その全てが 必要になります。 この犯行のために あなたは 何日も 何時間も 練習をし 計画を練ったはずです。 それを 証明することが できるのか? 榎本。 これを 見てください。 何重にも 擦り傷が このラインに沿って あります。 切り出しを 何度も引きずって できた 傷でしょう。 この傷と映像 切り出しを 警察に 調べてもらえば 全て 分かるということだな? はい。 でも 僕には 動機が。 井岡さんが あなたの ゴーストライターだと 知った 薬師寺さんから あなたは 脅されていたんですよね? 畑山さんが 見ていたんですよ。 (薬師寺)《演劇界 ナンバーワンの名誉ある 戯曲賞の受賞 ホントに おめでとう!》 (拍手) (鬼塚)《おい。 やめろよ お前。 バカじゃねえのか》 (薬師寺)《受賞の感想 教えてくれよ。 フフッ》 《うれしいんだろ? フフッ》 (鬼塚)《ああ》 (薬師寺)《よかったな ホント》 (薬師寺)《でもさ あの台本 井岡が 書いたんだよな?》 (薬師寺)《俺から みんなに 話してやろうか?》 《それは 脅しか?》 (薬師寺)《お前は 頭がいいから 話が早くて 済むよ》 (鬼塚)《俺が売れたら お前も 引っ張り上げるから 心配すんな》 (薬師寺)《ヘヘヘヘ》 《自分だけ 売れて 「はい さよなら」ってのが 落ちだよ》 《今回の賞さえ 取れれば ゴーストライターなんて 使わず 自分の力で はい上がれる。 だから…》 (薬師寺)《お前に そんな力が あるわけねえだろ?》 《いいかげん 気付けよ》 《今日からは 俺が お前を プロデュースしていく》 《たんまり 稼いでくれよ。 鬼塚大先生》あなたには 薬師寺さんを殺す 強い動機があります。 井岡君に 罪を 着せるつもりだったのか? いえ。 おそらく 罪を 着せるつもりは なかったでしょう。 この方法だと 井岡さんが 警察から 疑われることはあっても 犯人だという 証拠は 出てきませんから。 なるほど。 つまり 自分も ある程度 被害を受ける覚悟で 計画を練り バレなければ それで よし。 バレたとしても 偶発的な事故に 仕立て上げれば 最小限の被害で とどまる。 そういう計算だったんだな? はい。(薬師寺)《うわっ! ああ。 ああー》《ネーミング 間違えたな》 《密室じゃなくて…》 劇場にしておけば よかった。 フフッ。 ハハハ。(水城)悪かったね。 余分に 1日 君のスケジュールを 取ってもらって。 いや。 お気になさらないでください。 アハハハ。 ところで あいつは どうだ? 今日も 元気で 働いてくれてます。(水城)いや。 だから そこんとこは よろしく 頼みますよ。 そりゃ もちろんですよ。 ハハハ。 おう。 ちゃんと 頑張ってるか? あの。 私 ホントはね 演劇 続けてるの。 そうか。 そんなに やりたいんなら 続けなさい。 ホントに? (水城)でもな ちょっと バカにされたぐらいで 諦めるような夢なら 続けるだけ 無駄だぞ。 (里奈)はい。 (水城)それに 夢を 追い掛けているんなら いつも 笑顔でいなさい。 (里奈)何でも 笑顔って。 (水城)スマイル スマイル。 おい。 里奈。 その 彼氏に 一度 会わせてくれよ。 芹沢さん。 言ったんですか? まあ まあ まあ。[TEL]チラシ 届きました? 畑山さんが演出する 舞台に 井岡さんが 出演するんですって。 一緒に 行きませんか? あれ? あれ? 榎本さん。 ちょっと 聞いてます? (鍵の開く音) [TEL]榎本さん? おーい。 もしもし? 榎本さん? 一緒に 行きませんか? 榎本さん。 聞こえてます? さて 来週は 山あいの小さな村で起きた 初めての密室事件。 真犯人が誰なのか...わかりました.